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東京高等裁判所 平成5年(ネ)1256号 判決

主文

本件各控訴及び本件各附帯控訴をいずれも棄却する。

控訴費用は控訴人らの負担とし、附帯控訴費用は附帯控訴人らの負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

【控訴について】

一  控訴人ら

1 原判決中控訴人ら敗訴部分を取り消す。

2 原判決添付別紙物件目録記載の各不動産について競売を命じ、その売得金を原判決添付別紙売得金配分表の持分欄記載の割合で分割する。

3 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

二  被控訴人鵜澤清及び同鵜澤忠

控訴人らの本件控訴を棄却する。

三  被控訴人鵜澤惣一

1 原判決中控訴人ら敗訴部分を取り消す。

2 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人鵜澤清及び同鵜澤忠の負担とする。

【附帯控訴について】

一  附帯控訴人ら(被控訴人鵜澤清、同鵜澤忠)

1 原判決中附帯控訴人ら敗訴部分を取り消す。

2 控訴人らの附帯控訴人らに対する請求を棄却する。

3 附帯控訴費用は控訴人らの負担とする。

二  控訴人ら

附帯控訴人らの本件附帯控訴を棄却する。

第二  当事者の主張は、次のとおり補正するほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

原判決三枚目表一〇行目「使用し、」の次に「それぞれの持分に応じた占有・使用を越える部分について利得し、」を、同裏三行目「別紙」の前に「不法行為による損害賠償請求権または不当利得返還請求権に基づき」を加える。

第三  証拠関係(省略)

理由

一  当裁判所も、控訴人らの本訴請求は、原判決が認容した限度において正当としてこれを認容し、その余の共有物分割請求は不適法として却下すべきであると判断する。その理由は、次のとおり補正するほか、原判決理由説示のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決六枚目裏一〇行目に「さらに、本件遺言により、本件不動産についてのみ遺産の分割方法が定められ、その余のすべての遺産については単に相続分の指定がなされたものであるとして、不動産とその余の遺産につき本件遺言の趣旨を別異に解釈することが本件における遺言者の真意に沿うと認めるに足りる証拠はなく、そうした本件遺言の解釈は当裁判所の採用するところではない。」を加える。

2  原判決七枚目裏三行目から同八行目を次のとおり改める。

控訴人らは、被控訴人鵜澤清及び同鵜澤忠に対し、同人らが本件不動産を独占的に使用しているとして、不法行為または不当利得に基づき賃料相当損害金の請求をするところ、右被控訴人両名は、原判決添付売得金配分表記載の各共有持分権という権原に基づき本件不動産を占有、使用しているのであるから、右被控訴人両名に対する不法行為に基づく損害賠償請求は理由がないというべきである。しかし、共有持分権者といえども、共有物の占有、使用につき、自己の共有持分に相当する範囲を越える部分については、占有、使用していない他の共有持分権者の損失のもとに法律上の原因なく利得しているとみられるから、格別の合意がない限り、占有、使用していない他の共有者に対して、相応の不当利得返還義務を負担し、その金額は共有物の賃料相当損害金に依拠して算出されるべきものである。

3  原判決八枚目表一行目に次のとおり加える。

なお、右鑑定は、積算法及び賃貸事例比較法の二方式を適用して求めた各試算賃料を相互に関連付けて、本件不動産の適正賃料を算出したものであるが、積算法における敷地の基礎価格の算出においては、本件不動産の土地利用率や木造二階建という現況に応じて補正を施しているほか、建物の積算価格については、本件建物が増築後三五年以上経過していることを考慮して算出し、さらに被控訴人鵜澤清や同鵜澤忠が本件不動産を継続使用していることも勘案して必要経費を算出するなどして本件建物全体の積算賃料を求めている。また、賃貸事例比較法においては、本件建物と賃貸事例との品等格差等を考慮して比準賃料を導出し、以上の積算賃料及び比準賃料をもとに、右被控訴人両名が本件建物を長期にわたって使用してきた事実を考慮し、実質賃料から保証金、敷金、礼金等の契約に当たり授受される一時金の運用益を控除して案件に即した支払賃料を算出しており、その算出過程において不適切な点は認められず、右鑑定が本件不動産の適正賃料を不当に高額に算出したということはできない。

もっとも、成立に争いのない乙第二ないし一一号証及び弁論の全趣旨によれば、被控訴人鵜澤清及び同鵜澤忠は、昭和五四年分から昭和六三年分の損益計算書中において、本件不動産の地代家賃を年額一二万円ないし三六万円と記載して所得税を申告していることが認められるが、右地代家賃が亡鵜澤惣五郎に対して実際に支払われていたかどうかについて確証はないうえ、右記載は税務対策上経費として記載されたものに過ぎないとみる余地もあり、仮に右金額が惣五郎の生前同人に対して実際に支払われていたとしても、それは右被控訴人両名と惣五郎とが家族として同居生活していた等の事実による生活費ないしは固定資産税の一部とみるのが相当であり、そうした前提が失われた同人の死後においては、右被控訴人両名が他の共有者に対して支払うべき不当利得額を算出するにあたり、右金額は算出の根拠として考慮されるに値するものではないというべきである。

二  よって、原判決は相当であり、控訴人らの本件各控訴及び附帯控訴人らの本件附帯控訴は理由がないから、いずれもこれを棄却することとし、民事訴訟法三八四条、九三条、九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

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